束草生まれの私と漁師の仲間たち — 良い魚が先に届くムルフェ店
ムルフェ · Sokcho Hangari Mulhoe

私は束草で生まれ育ちました。漁師になった友人や兄貴分たちが夜明けの漁を終えると、卸市場に出す前に、まず当店の厨房へ電話をくれます。だからその日揚がった良い海鮮を、私たちが先に見ることができるのです。
ムルフェ店の実力は、包丁さばきより先に素材で決まります。
長年商売をしてきて得た結論です。どれほど手が速くても、どれほどスープが良くても、その日入った刺身がいまひとつなら、お客様にはすぐ分かります。隠しようがありません。
そして良い素材はお金だけでは手に入りません。束草ではとくにそうです。
夜明けの港からかかってくる最初の電話
地元の人間というのは、こういうことです。
小学校も中学校もこの町の学校に通い、今も同じ町に住んでいます。一緒にボールを蹴った友人、町の兄貴分、後ろをついて回った後輩たち —その多くが今も船に乗っています。束草ではごく当たり前のことです。夜明けの漁を終えた船が港に入ると、当店の厨房へ先に電話が来ます。「おい、今日は物がいいぞ。見に来い」
その日海から揚がった最高の海鮮が、卸市場に渡る前に私たちの前に届くのです。競りを経て何段階も回ってきた物と、船から直接来た物では違います。時間の差がそのまま鮮度の差ですから。
私たちがよく口にする言葉があります。
「その日船から揚がった良い物を先に見られること。それが当店のムルフェの土台です。」
良い魚は、高い値をつければ買えるのでは?
ときどきそう聞かれることがあります。
そうではありません。漁師も誰にでも良い物を渡すわけではないのです。一晩苦労して獲ったものを、きちんと扱ってくれる店に渡したいという気持ちがありますから。だから長い付き合い、互いに信頼できる関係が大事なのです。
一つの町で長く暮らしてきたことが、そういう財産になるのです。私たちが優れているのではなく、ここで生まれ育った恩恵を受けているだけです。
「今日は無い」と言える店
地元のつながりには別の面もあります。正直でいなければならないという重圧です。
海の事情は人にはどうにもできません。波が高ければ船は出られませんし、禁漁期は法律で漁が止まります。魚群が移動してしまえば、その年ずっと獲れないこともあります。
イカが代表例です。昔は束草といえばイカでしたが、近ごろは漁獲量の変動が本当に大きいのです。値が数倍に跳ね上がる時期もあります。
ですから私たちは、イカムルフェ・イカフェドッパプ・イカの刺身のように生のイカを使うメニューの値段を、常に「時価」と正直に表示しています。そして物が良くない日は、そもそも売りません。
お客様には残念に思われるでしょう。「どうして今日はダメなの」というお声もときどきいただきます。それでも中途半端な物をお出しするよりはいいと考えています。獲ってきてくれた漁師仲間に恥じないためにも、そうあるべきだと思うのです。
こうして受け取った良い素材を、壺の器に盛って最後のひと匙まで冷たくお出しすること、それが私たちの仕事のすべてです。
旬がそのままメニューです
海から直接受け取っているので、季節ごとにムルフェの構成が少しずつ変わります。
春には春に良い魚が、秋には秋に良い魚が入ります。禁漁期にかかる魚種はその間外れ、別の素材で補います。
ですのでメニューの写真は一例としてご覧ください。その代わり、その日入った良い素材でご用意します。これは自信をもって申し上げられます。
海からもらったものを、束草へ返す
束草ハンアリムルフェは、毎年2回、失郷民のお年寄り約300名をお招きして食事を差し上げる会を開いています。
束草は失郷民(故郷を失った人々)の街です。
朝鮮戦争のとき北から南へ来られた方々が「すぐ帰れるだろう」と思ってしばらく留まった場所が、そのまま故郷になりました。その方々が集まって暮らした町が、いまのアバイ村です。
その方々が私たちの親の世代であり、漁師仲間の親でもあります。生涯を海で働いて子どもを育て上げた方々です。大げさな理由はありません。束草の海のおかげで商売をさせてもらっている店として、束草にできる当たり前のことをしているだけだと思っています。
お年寄りをお招きする日は、本当に目が回るほど忙しいです。でもその日が一年でいちばん気持ちのいい日でもあります。「おいしかったよ」のひと言で力が出るのです。
束草海水浴場の前、ターミナルから徒歩3分
その日海から受け取ったものを、壺に盛ってすぐにお出しする店です。
束草海水浴場のすぐ前、束草高速バスターミナルから徒歩3分です。お車がなくても便利ですし、お車でお越しの方は広い専用駐車場をお使いいただけます。
お食事のあとはすぐ前の浜を散歩したり、夏なら海水浴を楽しんだりするのもおすすめです。最上階の「空の階段」展望台に上がると、海を背景にした写真が撮りやすいです。
